2023年度 理事長所信

はじめに

戦後間もない荒廃した時代、真の日本再建を誓った青年たちの手によって日本の青年会議所運動は始まりました。以降、急速な経済成長によって目覚ましい発展を遂げた現代、当時の青年たちが想い描いた「明るい豊かな社会」は、すでに実現されたのかもしれません。しかし、現代と未来を担う私たち青年世代が目指すべき理想は、これより先にあります。時代や環境の変化がもたらす新たな社会的課題に目を向け、我がことに捉えることで、私たちはまた未来へ希望を抱くようになるのです。その想いを行動へと移すことが運動のはじまりであり、共感を広げることで運動はさらに力強く前進し、延いては私たちが描く「明るい豊かな社会」の実現へと繋がります。私たちは青年会議所を通して、その運動を起こせる青年としての発展と成長の機会を日々の活動から得ているのです。先人達の強い信念と血の滲むような努力によって積み重ねてこられた歴史に学び、現代社会が持つ課題と向き合って、社会によりよい変化を起こす不変の志で、無限の可能性が広がる未来へと一歩を踏み出しましょう。そして、あらゆる機会に勇敢に挑むJAYCEEとなって、運動を起こしてまいります。

多様で持続性のある地域へ

一般社団法人淡路青年会議所は淡路島が一市十町時代から「淡路はひとつ」を基本理念に、諸先輩方がそれぞれの時代背景でまちづくり運動を行い、私たち現役へと受け継がれてきました。その一つに「淡路島一市運動」があり、淡路島内の地方行政が一つにまとまることの重要性を訴えてきました。今年度も私たちは、その運動に強い想いを持って取り組んでまいります。

現在、多くの地域で少子高齢化による過疎化が進行する中で、地方の在り方やこれからの時代をどのようにして生き残るのかということは、まちづくりにおける大きなテーマの一つになっています。一方で地方における利便性、ICTやIoTの普及に伴うデジタル化が進み「どこにいても誰とでも繋がれる社会」へ変遷していく現代において、住む場所の優位性はこれから益々薄れていくと感じます。ここ淡路島においても移住者が増加傾向にあることに加えて、都市部からの企業移転によって東京一極集中から地方分散へ明るい兆しがみられています。それでも、近い将来は地方のみならず都市部においても人口減少問題に直面するとされる中、私たちは更なる危機感をもって持続可能な社会に向けたまちづくりを推し進めていかなければなりません。それには現状の課題を受け入れながらも、淡路島がより利便性に優れた地域となって、人々の暮らしをさらに豊かにしていく考えを持つことが重要であり、先進的なツールを駆使し淡路島を圏域とした戦略的なまちづくりをおこなっていく必要があります。そして、これらを進める上で島内行政の一体化の可能性は大いに広がることでしょう。高度なサービスを提供していくためには絶えず利便性の向上、効率化を図り、公共性を高めていく必要があります。私たちは、淡路島が本当の意味で持続可能な地域社会となるために淡路島一市運動を進めてまいります。

人間力を育む環境づくり

 私たちは奉仕の精神のもと、ひとづくり、まちづくりへの取り組みから自身の発展と成長の機会を見出しています。そして、そこから得た力をまた地域や組織に注ぐことによって、よりよい方向に進むのならば、私たちは積極的に行動していかなければなりません。

地域に目を向けると、目の前に浮かんでくるのは地域の未来を担う子どもたちです。アフターコロナと言われながら未だに変異を繰り返し、猛威を振るう新型コロナウイルスによって、楽しいはずの日常が空虚に感じてしまう現代、将来子どもたちにとってこの時間はどのように記憶されるのでしょうか。また、目まぐるしく変化する情報社会に、私たち大人は便利さを優先してしまい、子どもたちに正しい選択をできるように導くことができているでしょうか。子どもたちが道徳心に溢れ、夢を描くことは未来を明るくする原動力であり、淡路島の未来を託すために欠かせないものです。物質的に豊かになった現代だからこそ、私たち大人が子どもたちに伝えていかなければならないのは、心を磨き、体を練る、健全な精神の育成と希望に胸を膨らませる想いの醸成であり、私たちはその機会を提供してまいります。

組織に目を向けると、青年経済人として時代に先駆けた活動を行っていくためには、柔軟な発想力と活発な行動力が必要です。青年会議所はそれらを養うための仕組みを持っており、それらを活かすための土台を設けています。メンバー一人ひとりの資質が向上するということはJCI淡路の組織力が向上することでもあります。私たちは次代を担うメンバーと、地域に影響を与え、地域の魅力を発信し、地域を愛せる人財へと成長する機会を創ることで、このまちを牽引するリーダーとしての意識を醸成させていきたいと考えます。そして、私たちの運動がさらに力強く進んでいけるように、活動の魅力を存分に伝えて多くの共感を広げてまいります。

未来に繋がる同志の拡大

日本全国に存在する青年会議所の多くは会員数の減少や在籍年数の短期化に頭を悩ませ、同志の拡大に励んでいます。ここ数年、JCI淡路のメンバーは大きく変化し、年齢の若いメンバーも増えつつあり、メンバー数自体も維持をすることができています。しかしながら、地域へのより強い影響力と力強い活動を行うためには、多くの同志を集める必要があり、拡大活動は活発に行っていかなければなりません。そして、青年会議所活動は20歳から40歳までの限られた期間でのみ活動するため、常に人は入れ替わります。それでも、JCI淡路への共感を増やし、常に淡路島の未来を考える若者が存在し続ける組織であるためにも、拡大活動は継続的に行わなければなりません。これらの拡大活動をなすためには、組織内だけの単一的な拡大メソッドではなく、多くを巻き込み、統率のとれた拡大活動を発信し続けなければなりません。人が増えるだけではなく、一人でも多くの同志を増やし、心からまちづくりへ参加できる人財をもって永続的な組織づくりを継承してまいります。

垣根を越えた交流

私たちが活動できる20歳から40歳までの期間は、仕事、家庭、趣味などにも打ち込める期間であります。この人生でもっとも重要な期間に、同じ志を持って集まったのが青年会議所メンバーです。限られた時間の中で共に多くを学び、共に困難に立ち向い、それを乗り越えることで、自己の成長へとつながります。しかし、ここ数年は新型コロナウイルスの影響により、膝をつきあわせての交流は甚だしく損なわれることになりました。「ニューノーマル」が打ち出され、コロナとの向き合い方を学んだ今、あらためて従来の枠組みにとらわれず、新たな形で交流する機会を創出することが求められます。その機会が尊く、大変貴重なものだと理解し、メンバー同志がしっかりと交流を深め、絆を更に強固なものへとするために、新たな生活様式から交流のかたちを見出してまいります。また、周りの支えがあるからこそ私たちは安心してJC活動に取り組めるのです。だからこそ私たちが日々どのような活動をし、どのような仲間と地域の未来について考えているのか、これまで以上に共有し共感を広げていくこともJC活動の一つであると捉えて、枠組みを越えた交流を積極的におこなってまいります。

さいごに

このような時代だからこそ、私たちは青年会議所活動で培った経験を活かし、地域を牽引する存在として、リーダーシップを発揮する必要があります。そして、広い視野と見識をもった信頼される人財として、明るい豊かな社会の実現へ向けて地域社会に貢献していかねばなりません。それを実現できるのは青年会議所であると信じています。現状を悲観的に捉えるのでなく、次の一歩をどう踏み出すべきかを考え、行動していくことが重要です。青年会議所は常に歩みを止めることなく「奉仕・友情・修練」の三信条を胸にメンバーが切磋琢磨しながら成長し、ひとづくり、まちづくりに寄与することで存在意義を発揮してきました。そして私たちは多くの方々の支えのもとに活動を行うことができております。人に、地域に、活動を行えていることすべてに対して感謝と敬意を持って、限られた時間を惜しまず様々な機会にも勇敢に向き合って、行動を起こしてまいりましょう。それが、「明るい豊かな淡路島」の実現に繋がると信じて。